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ストーカー規制法の法改正を望む ―新たな精神医学的概念の必要性―


1980年、ジョン・レノンが熱狂的なファンに射殺された事件は世界中に衝撃を与えた。
昨年、芸能活動をしていた女子大生をナイフで刺して殺害を図ったとして、殺人未遂罪などに問われた被告人の判決公判が2月28日開かれ、懲役14年6月(求刑同17年)が言い渡された。被害者は一時危篤状態となるも、幸い回復したが、後遺症や心的ストレス障害のため日常生活にも困難が生じている。出所後、被害者に対する再犯の可能性も否定できず、被害者やその家族の不安は如何ばかりかと思われる。

ストーカーが、怒り、憎しみ、嫉妬、怨恨などで情動行為に及んだ時、日頃の当人の人格と著しく異なっていて、記憶が曖昧であるような時には、種々の程度の意識障害を来していることがある。このような意味で、「責任能力」が障害されている可能性もある。従来の傷害事件として「責任能力あり」や「責任能力なし」として裁かれるのではなく、ストーカー精神病(仮の病名)であれば、服役中に十分な治療を受けさせることが望まれる。新たな精神医学的な疾病概念の構築および治療法の開発と、それに見合った法改正が望まれるところである。